表現の自由に対する抑圧に繋がりかねない児童ポルノ禁止法

 
             読売新聞の報道によれば、児童ポルノ禁止法の改正案を、民主党自民党公明党の三党で今国会に提出する、とのことだ。社民党の了解を得て、提出される運びである。

 改正案の目玉は、なんといっても単純所持の禁止にある。
 児童ポルノを製造し、販売することだけに止まらず、より消極的な動作である「単純所持」まで罰金の対象とするものだ。

 他国では、すでに単純所持を罰する法案が整備されているが、他国でもたびたび行き過ぎた摘発がおこなわれて問題視されている(国によっては、日本のアニメ作品を持っていただけで逮捕された例もある。)。

 なにをもって児童ポルノと言えるのかどうかの定義が未だに明確でない以上、単純所持を禁止する改正案には賛成できない。

 法律は、常に国民の自由を侵さないことに最大の配慮をしなければならない。
 その法律が、一般人に「萎縮的効果」を与えるようなものは、憲法31条違反の疑いが強く、法の明確性を達しないものとして、排斥されるべきだとおもう。

 それが児童ポルノにあたるのかどうか、などというのは、実際、個人差が大きく、結局は感覚的なものに左右されることが多い。

 たとえば、我が国で「わいせつ」にまつわる犯罪がいくつか刑法典に規定されているが、裁判所は「わいせつ」について、次のように定義している。

 <いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為>(最高裁昭和32年3月13日大法廷判決)

 ハッキリ言って、ふつうの人は、判例の定義を見て「なんじゃこりゃ」と思ったに違いない。
 しかし、それも無理はない。法律家にも、この定義のことが良く分からないのだから。。

 要はこういうことだ。

1.いたずらに性欲を興奮又は刺激させ

 → ムラムラさせるようなもので・・・

2.普通人の正常な性的羞恥心を害し

 → 普通の人がいやらしいと思えるもので・・・

3.善良な性的道義観念に反する行為

 → こんなもんを放置したら、社会が乱れるようなもの

 けっきょくのところ、裁判官がエロいと思うかどうか、これですべてが決まる。それだけあやふやな概念だということだ。

 児童ポルノにも似たようなことがいえる。

 どこからどこまでが児童ポルノといえるのか、がまったく判然としないのである。

 民主党は、党内の反対意見に配慮して「過去に取得した児童ポルノについては処罰対象から外す」としたが、なにを基準に「過去に取得した」と言えるのかどうかも曖昧だ(取得時が「過去」なのか、出版時期が「過去」なのか、といったところにも言及していない)。

 社民党が慎重論を唱えているように、この種の「曖昧さ」が残る法案は、濫用されやすく、それ故、人の自由を抑圧する危険性が極めて高い。

 これから「"これ"を持っていて良いのか分からない」という疑問を持つ人が何人も出てくるだろうが、こういう事態を招くことそのものが自由への抑圧だ。
 


theme : 児童ポルノ法改正案
genre : 政治・経済

tag : 児童ポルノ 児童ポルノ禁止法 自民党 民主党 公明党 表現の自由 わいせつ 憲法

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