この時期になると思い出す北京五輪の聖火リレー

 
             ブログの更新が停滞気味で申し訳ないです。コメントには目を通しております。本当にありがとうございます。
 今日書く内容は、「つぶやき」の延長なので、あまり気にしないでください(?)。

 この時期になると、どうしても北京五輪の聖火リレーを思い出してしまう。
 長野で行われた異常な聖火リレー。沿道は中国人で真っ赤に染められ、その場にいた日本人たちは、警察が恣意的に中国人の身体の安全を優先的に取り扱ったため、ネットは「警察は誰の味方なのか」と怒りを示す書き込みに溢れた。

 中でも私が最も印象に残っているのは、当時のマスコミの聖火リレーの報じ方であった。

 たとえば、聖火リレーの走者を務めた萩本欽一さん(以下「欽ちゃん」)。
 テレビでは、欽ちゃんが走った後に開かれた会見で

 <欽ちゃんのところで(日本人が聖火リレーの妨害行為を)やんないでよ。ハッピーで終わりたいと思ってたのに>

と発言した部分だけが取り上げられたために、ネットでは、欽ちゃんを非難する声が強かった。

 もちろん当時は、中国チベット人への弾圧が続き、罪なきチベット人たちが正当な理由もなく次々と身柄を拘束されていく中のことだったから、この発言だけを聞けば、私だって怒りに身を震わせたに違いない。

 しかし、実際は違った。

 欽ちゃんがリレーを走った直後の会見の様子をテレビ東京が伝えていたと思うが、そのときは、欽ちゃんは、

 <でも欽ちゃんの前で何か伝えたいと思ってやってくれたのなら、それは嫌じゃないな>

と、日本人のFreeTibetムーブメントや抗議活動に理解を示す趣旨の発言をしていたのだった。

 ただ、どうしてかこの発言の部分だけは、マスコミはカットして欽ちゃんの会見の様子を伝えていた。この部分をカットしたのは、意図的なものだろうが、上記発言のことを知らなかった人たちがネットに欽ちゃんを批判する書き込みをしたことは理解できなくはない。知らなかったのだろうし、マスコミによって知る機会を奪われていたのだから、知る術がほとんどなかったともいえる。

 さて、今の中国における人権状況は、あのときと比べて良くなっているのだろうか。入ってくる情報量は、あのときとあまり変わっていないような気がするし、私の調べた限りでは、中国における人権状況はむしろ悪化していると判断したほうがいいように思う。

 上海万博に浮かれるのはいいけれど、今回の万博で世界が知るべきは、中国において、個人が「信教の自由」すら保障されていない中で生活を強いられることの現実とその非人道性、ではないか。

 Free Tibet. 合掌。

ーーーーー>

○ 今回のエントリと関連するテーマを取り上げた有益なサイト等

 <たけしが聖火ランナー欽ちゃんを痛烈批判、ネットでは賛否両論。>(narinari.com)
 http://www.narinari.com/Nd/2008049331.html

 <中国の人権問題>(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E5%95%8F%E9%A1%8C

 <今更だけどこれ重大な話:中国の報道統制>(「不条理日記」さま)
 http://himadesu.seesaa.net/article/145928936.html#more

 <中国の人権状況、一部でさらに悪化 米国務省が報告書>(産経新聞)
 http://sankei.jp.msn.com/world/america/100312/amr1003120959004-n1.htm

theme : 民主党・鳩山政権
genre : 政治・経済

tag : チベット 北京五輪 中国 人権 萩本欽一

[司法] 死刑制度容認が過去最大に

 
             死刑制度存置を望む国民がここまで膨れあがっていることにまず驚きました。

 統計方法についてですが、私は基本的に問題はないと考えています。
 質問内容が存置論に誘導的になっているとの批判もありますが、今回の内閣府調査で設定された質問は以下の3通り。

1.「どんな場合でも死刑は廃止すべきだ」
2.「場合によっては死刑もやむを得ない」
3.「わからない・一概に言えない」

 場合によっては死刑をやむを得ないと考えるのが存置論であるのは明らかであるし、いかなる場合であっても、いかなる罪を犯した場合であっても死刑を選択することは絶対的に禁止されるべきだと考えるのが廃止論の立場であるから、上記質問項目は適切でしょう。

 批判者の多くは廃止論者なのでしょうが、廃止論とはそういうものである以上、そのような質問をされても「廃止すべきだ」を選択するだけの覚悟が必要です。

 という私も廃止論に与しますが、このような世論を受けた以上、即時、現行死刑制度を廃止するよう求めることは、問題があると言えるでしょう。
 国民感情を無視して刑罰制度を論じることは避けなければならないからです。

 最近、死刑廃止論者も柔軟な態度を示すようになっており、中には、死刑の代置制度として、仮釈放のない、いわゆる絶対的な終身刑を設けるべきではないか、との意見があるようです。

 私もそのような意見には耳を傾ける必要があるとは思いますが、憲法36条の禁止する「残虐な刑罰の禁止」に抵触しないかは別途論じる必要があり、学者の中にも、絶対的終身刑が仮釈放を絶対に認めず、自然な形で死に至るまで一定の場所に合法的に監禁を強いるものであるとする点で、「残虐な刑罰」に該当するのではないか、との意見もあるくらいです。

 絶対的終身刑を導入する場合には、かかる違憲論に対してどのような反論をすべきか理論的に固めておく必要があるでしょう。

 私は、まず国民が死刑制度をはじめとする我が国の刑罰全般に対する知識を持つことが必要だと感じています。
 たとえば、無期懲役刑は、確かに数年前までは仮釈放も柔軟に認められており、ある一定の期間が経過すると、仮釈放が認められ、仮釈放中に別の罪を犯して逮捕される…などということも多々ありました。実際、死刑に処せられた者の一部は、仮釈放に罪を犯したがために死刑判決を受けたものもいるくらいです。

 ただ、今でもそのような「甘い」無期懲役刑がなされていると考えているのであれば、そのような認識は今にでも改めたほうがいいでしょう。
 ここ数年は、仮釈放が認められた者は10人に満たない数に止められ(まず20年内に出られることはないと考えるべきです。)、一時期は「10年くらいで出てこられる」などと言われた無期懲役受刑者ですが、今は40年以上懲役に服している者も珍しくはなくなりました。

 このような運用を知らず、無期懲役刑が甘いからと言って安易に死刑制度を存置することを希望している者も少なくはないと思います。まずは運用実態を知ることから、死刑制度を考えてみてはいかがでしょうか。そもそも我が国の死刑執行の方法すら知らない人もまだ大勢いるのでしょうし。

 もちろん、わたしは自分の廃止論を他人に押しつけるつもりはないし、国民の多くが存置論を妥当と考えているからといって、他の廃止論者のように国民をバカにするようなことはすべきではないと思っています。

 また、我が国の一つの文化として他国と明確に違うのは、「死をもって償う」文化がある、というのも尊重すべきだと思います。死者に鞭を打つようなことは言わないというのも、このような精神的文化によるところが大きいのでしょう。
 だから、文化の異なる他国から「死刑で人は救われない」などと言われる筋合いもない、との意見も理解することができます。

 それに、我が国の司法が長らく無視し続けてきた「被害者」の人権にも、ようやく光が当たろうとしています。
 これまで社会的にも法律的にも無視されてきた被害者(これはもちろん遺族を含む。)の過酷な現実が世に知られるようになったことで、国民が我が国の司法に怒り、被害者を支援する動きに伴って、死刑制度の存置を支持する人が増えている一つの現象もまた認められるのでしょう。
(もちろん遺族の中には死刑廃止を望む人もいますが、まず例外であって、そのほとんどが死刑の存置を望んでおられる現実も受け止める必要があります。)

 なお、上記毎日新聞の記事によれば・・・

1.死刑を容認する理由(複数回答)
(1)「死刑を廃止すれば被害を受けた人や家族の気持ちがおさまらない」(54・1%)
(2)「命をもって償うべきだ」(53・2%)
(3)「死刑を廃止すれば凶悪犯罪が増える」(51・5%)

2.死刑を廃止する理由(同)
(1)「生きて償ったほうが良い」55・9%
(2)「裁判で誤りがあった時に取り返しがつかない」43・2%
(3)「国家であっても人を殺すことは許されない」42・3%

・・・というのが、各立場の意見のようです。

theme : 法律全般
genre : 政治・経済

tag : 死刑 死刑廃止 死刑存置 死刑廃止論 被害者の権利 人権 適正手続

[外国人参政権] 外国人の人権保障について考えたことがありますか

 
             外国人参政権について、これまで平成7年最高裁判決をたびたび引用してきましたが、そもそも「外国人の人権」とは何か、という問題があります。

 外国人には参政権がなく、「日本国民のみにその保障が及ぶ」として、いわゆる禁止説に立脚した平成7年最高裁判決も、「外国人の人権」の問題を前提に議論を進めています。

 外国人も同じ人間なのだから、日本国民と変わらず、同程度の人権保障が及ぶ、と普通の人は考えるかもしれませんが、我が国の最高裁は、そのような立場に立脚しているわけではありません。

 外国人の人権について、おそらく法学部の出身であれば、必ず憲法の講義で「リーディングケース」として教わるのは、いわゆる「マクリーン事件最高裁判決」(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決)でしょう。

 マクリーン事件最高裁判決では次のように「外国人の人権」について判断が示されています。

 <基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであ>る。

 この立場は、一般に「性質説」と呼ばれており、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるもの」については、外国人に対して人権保障が及ばない、とされています。

 この立場によれば、たとえば、参政権に関しては、上述した平成7年2月28日最高裁判決が言うように、参政権が「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるもの」に該当することになりますから、「在留外国人に対して地方公共団体における選挙権を保障したものということはできない」ということになるのです。

 これは、参政権に限った話ではありません。たとえば、政治活動の自由に関しても、外国人と日本国民とでは、保障の程度に差異があります。
 先のマクリーン事件最高裁判決は、「政治活動の自由についても、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼすものを除き、その保障が及ぶが、その保障は在留制度の枠内で与えられているに過ぎない」としています。ここでも、外国人の政治活動の自由について、<我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼすものを除き>という留保があることに注目すべきでしょう。

 しかしながら、外国人参政権のような、永住外国人を対象とする場合は、人権保障の考え方も上記のような「外国人の人権」とは異なるのではないか、とする意見もあります。たしかに、外国人にも、一時的な旅行者から、難民や永住者など長期的滞在を目的とする外国人まで幅広い人たちが含まれていますから、「外国人の人権」とひとくくりに議論することが適切ではないとの意見は、十分傾聴に値する議論だと思います。

 ですが、在日コリアンの東京都管理職試験受験拒否をめぐる最高裁平成17年1月26日「大法廷」判決(大法廷判決ですから、具体的な憲法判断が下されたものと考えてよい。)は、次のように判示しています。

 「公権力行使等地方公務員の職務遂行は、住民の生活に直接間接に重大な関わりを有するので、・・・国民主権の原理に照らすと、原則として日本国籍を有する者の就任が想定されている
 地方公共団体が、公権力行使等地方公務員の職とこれへの昇任に必要な経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築し、日本国民である職員に限って管理職への昇任を可能とすることには合理的な理由があり、労働基準法3条、憲法14条1項に違反しない。
 この理は、特別永住者についても異ならない。

 最後の一文からも明らかなように、最高裁大法廷は、永住者であっても一般外国人と特段異なる取扱いをしない旨を述べています。いわゆる外国人類型論を全否定したかどうかは議論の余地がありますが、いずれにせよ、最高裁大法廷は、かなり慎重な立場を採用している、と考えて良いでしょう。

 こういった外国人に関する人権論を踏まえた上でなければ、外国人参政権に関する議論をすることは適切ではないように思います。

 簡単に考えれば分かることですが、今のところ、外国人と日本国民とでは、人権保障の程度に差異があるのです。政治活動の自由に関しても、それなりの差があります。そうであるのにもかかわらず、一定の要件を満たした外国人に、いきなり参政権を付与するというのはどういうことか・・・容易に想像がつくようにおもいます。

 次回更新予定 2010年1月18日(月)

theme : 外国人参政権問題
genre : 政治・経済

tag : 外国人参政権 民主党 自民党 外国人 人権 日本国憲法 参政権 マクリーン事件 外国人管理職事件

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