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新たな憲法秩序に上手に取り込まれていった現行天皇制 - わたしたちの憲法を考える(4)天皇2

 久々に憲法に関するエントリを書いてみようと思います。

 以前,象徴天皇制と国民主権原理を明らかにした第1条について書きましたが,今回のエントリでも引き続き「天皇制」について書いていこうと思います。

 * * *

 天皇制廃止を迫った日本共産党

 当時の日本共産党は,天皇から国民に主権が移譲され,国民主権(人民主権・人民主義)を基調とする新憲法秩序の下では,天皇制は不要だと主張していました。
 1946(昭和21)年6月29日に発表した「日本共産党憲法草案」の前文では・・・

 <ここにわれらは、人民の間から選ばれた代表を通じて人民のための政治が行はれるところの人民共和政体の採択を宣言し、この憲法を決定するものである。
 天皇制はそれがどんな形をとらうとも、人民の民主主義体制とは絶対に相容れない。
 天皇制の廃止、寄生地主的土地所有制の廃絶と財閥的独占資本の解体、基本的人権の確立、人民の政治的自由の保障、人民の経済的福祉の擁護――これらに基調をおく本憲法こそ、日本人民の民主主義的発展と幸福の真の保障となるものである。>

 ・・・と明確に天皇制の廃止が盛り込まれています。

 * * *

 連合国側の要求に応える形での新たな天皇制

 『帝国憲法改正問題試案』という外務省の資料があります。日付は1945(昭和20)年10月11日。
 外務省条約局第一課長の田付氏が準備したもので,当時の条約局の改憲方針がまとめられています。

 その中で田付氏は憲法改正に関する連合国の対日姿勢・要求について次のように報告しています(一部読みやすい形に改めています)。

 ・<聯合國特に米國においては右憲法改正に當り民主主義的,平和主義的及合理主義的精神及制度に則り行はれることを要求>。

 ・<斯る憲法の改正の時期に關する聯合國特に米國の態度は明確ならざるも「国民の自由なる意思」に基く改正を希望>。

 連合国(主に米国)は日本側に,改正の内容が<民主主義的,平和主義的及合理主義的>なものでなければならないと迫る一方で,今回の憲法改正が連合国によって押しつけられたり,強制的に改正させられたものではない意思を明らかにするよう求めていました。

 この要請に応えるためには,まず天皇主権を採用している明治憲法を改正し,主権を天皇から国民に移譲させた「国民主権」を基調とする今の憲法の形にする必要がありました。

 ただし日本共産党のように天皇制を廃止するわけにはいきません。田付案にも次のとおり改憲方針が示されていました。

 <天皇制度は帝國肇國の大精にして本制度の除去は日本帝國の滅亡なり。如何なる事態に相遇するも本制度の維持確立は帝國存立の絶對的基盤と言ふべし。>

 しかし天皇制の維持が<存立の絶対的基盤>と言っても,単に帝国憲法における天皇制をそのまま改正案に組み込むのでは,連合国側の求める「民主化・合理化」という要請に応えられません。
 そこで天皇制を維持しつつも,連合国の要求に応える内容をもった改正案を模索することになります。

 田付氏は新たな天皇制のありかたについて,次のように提案しています。

 <従来天皇と國民との中間に存在する機關にして法律上責任を有せず而も國民とも何ら關係を有せざるもの相當存在し(例へば内大臣,枢密院の如し)之が爲機構の複雑化せる外國民の意思の上通を塞ぎ爲に立憲君主の政体はその本来の姿を損はるるに至れり>

 少し難解な文章ではありますが,簡単に言えば,民主化と天皇制を両立させるために,田付氏は,既存の天皇制を利用して特権的な地位を築いてきた内大臣府や枢密院のような機関を排することを提案するのです。

 * 次回に続きます。
  1. 2009/02/06(金) 21:51:17|
  2. 日本国憲法
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