中川昭一元財務相の醜態会見を,単なる個人の「酒癖」で終わらせてはならない

 
             なかなか更新できず,申し訳ありません。コメントへのお返事も滞ってしまっています。

 今回のエントリも手短ですが,少し思ったことを書かせていただければと思います。

 中川昭一元財務相の醜態会見。一国民としてあのような会見が全世界に配信されてしまったことを残念に思います。

 私は決して中川氏を庇うわけではありませんし,彼は辞めて当然だったと思いますが,ここで一つ書かせていただきたいのです。
 これまでもそうですが,私のブログは,日本のマスコミが報じていない「事実」を,少しでも多くみなさんにお届けし,みなさんと一緒にメディアリテラシーを養うことが目的であります。

 日本のマスメディアが言うように,中川さんのあの会見はまさに「醜い」ものでした。
 酒だろうが,風邪薬だろうがなんだろうが,あのような体調の下で会見をしたこと自体が問題です。庇う余地はありません。

 ですが,私たちは気づかなければなりません。あの会見は一個人の酒癖のためだけによって引き起こされたものというわけでもない,ということを(何度も重ね重ね申し上げますが,もちろんだからといって彼の失態を正当化しようとは思っていません)。

 The London timesの記事を見てください。

 Under the influence
 http://timesonline.typepad.com/times_tokyo_weblog/2009/02/shoichi-nakagaw.html

 Shoichi Nakagawa's display of public drunkenness (sorry, I mean public intoxication with "cough medicine") is one of the most extraordinary self-humiliations by an international statesman I can recall. You have to go back to the last days of Boris Yeltsin to find a similar spectacle (even the former leader of Britain's Liberal Democrats, Charles Kennedy, didn't make such a fool of himself). It is tempting to chuckle off the whole thing as just one of those sillinesses that foreign politicians get up to every now and then. But the more I think about it, the more serious and appalling it comes to seem, and in so many different ways, far beyond the usual run of "gaffes" perpetrated from time to time by Japanese leaders.

 むろん中川さんに関する記事です。まだ辞任前の記事なので,いろいろと推測を含む部分を多く含んでいますが,みなさんに見ていただきたいのは次の部分です。

 同紙は<At the most obvious level, it is evidence of unforgivably poor judgement on the part of everyone concerned. Mr Nakagawa's own irresponsibility hardly needs to be spelled out.>とか,<Is this arrogance? Or naivety? Or alcoholism? Whatever the answer, it should not be allowed to mix with that degree of power.>と断じて,彼のやった失態は許されないと断った上で,次のように報じています。

 <Then I start to wonder about the civil servants who allowed this to happen. Japanese bureaucrats are notorious for their overbearing bossiness towards their politicians, who are scarcely allowed to go to the loo without their permission.>
 この部分は,この事態を許した日本の官僚の責任を問うものです。我が国の官僚が政治家よりも遙かに横柄な存在だと報じています。
 
 別の部分も見ておかなければなりません。
 <Finally, it is a reproach to the Japanese press, and another example of the emasculating effect of Japan's system of reporters' "clubs". >
 ここは日本のマスコミの責任を問う記述です。海外の言論界から厳しく批判されている記者クラブについても触れられています。

 そして記事は次のように占めているのです。
 <There he sat, slurring and sighing, barely able to keep his eyes open, missing questions and muddling his facts. And no one dared to ask the simplest question of all: "Minister, are you drunk?">

 どういうことが書かれているかと言うと,簡単に申し上げれば,こういうことです。

 中川さんがあの会見場で明らかに「おかしな」状態であったにもかかわらず,なぜ記者たちは「大臣。酔っているんですか」と聞かないのか理解できない(あの会見を中止することだってできたはずだ。なぜおかしな会見をしている大臣を前に,記者らが黙って聞いているのかが理解しかねる)。

 ・・・そういうことが書かれています。
 中川さんの会見での姿は,確かに海外のマスコミは「笑いのネタ」として使っています。ハッキリ言って,我々の想像以上海外のマスコミは今回の出来事をバカにしています。

 しかし同時に,海外のマスコミはもう一つの奇妙な事情を指摘しているのです。

 それは,なぜ,あの会見は防げなかったのか,ということです。
 英国だって,ロシアだって,酒飲みの政治家はたくさんいたものです。しかし今回のようにパブリックな会見であのような失態をした例はほとんどない。
 だからこそ海外の記者らは日本の大臣の失態を不思議そうに見ているのです。

 つまり,海外の記者らの不信の目は決して日本の経済に向けられているだけではなく,日本の官僚機構と根深い談合体質から脱し得ない日本のマスコミにも向けられている,ということです。

 なぜ周りの官僚は止めなかったのか。平然とそのまま大臣をあの壇上に上げたのか。
 なぜ日本の記者たちは異常会見を黙って聞いているのか。なぜ一人も「大臣,体調が悪いんですか?」「きちんと答えてください」の一言も言えないのか。

 海外のマスコミの反応はそういった不信感ゆえのものだということを知っておかねばなりません(中国や韓国のマスコミはそうでもないみたいですが・笑)。

 中川さん個人の酒癖では決して終わってはならない問題です。今回の騒動は,日本の抱える病が引き起こしたと言っても過言ではないでしょう。

 ー ー ー

 次回更新までお時間を頂戴するかもしれませんが,今後ともよろしくおねがいいたします。コメントもお気軽にお寄せください。後日,お返事を書きます。

敗戦直後に考えられていた残すべき天皇制のかたち-わたしたちの憲法を考える(5)天皇3

 
            天皇の存続を第一に,第二にポツダム宣言の精神の具現を目指した外務省

 外務省条約局『憲法改正大綱案』では憲法改正の指導理念を次のように定めていました。

 1.天皇ノ地位に關する現行憲法ノ建前ハ之ヲ堅持スルコト(國体ノ護持)

 2.「君」ト「萬民」トノ間ニ介在シ來レル從來ノ不純物ヲ除去スルコト(一君萬民ノ政治)

 3.眞ニ民意ヲ基礎トシ國民ノ祉増進ヲ目的トスル政治ヲ實現スルコト(民本主義)

 この三つを柱としつつ,同案では改正の具体方針として・・・

 ポツダム宣言の受諾に伴い,最小限改正を必要とする事項 = 
    (イ)領土の変更,(ロ)軍国主義の抹殺,(ハ)民主主義

 ・・・を掲げていました。

 前のエントリと重複することではありますが,当時の外務省ポツダム宣言の受諾と当時のGHQの要求に応える憲法の改正が必要だと考えながらも,天皇制を存続させる道を模索していたようです。

 敗戦後にあるべき天皇制のかたち

 しかし天皇制(国体護持)を残すとしても,どういう形で残すかについては,大日本帝国憲法における天皇制のままで良いとか,今の天皇制のように政治性を払拭する形が良いとか,様々な意見があったようです。

 そこで当時の政府が参考にした資料の一つ,高木八尺(やさか)の『天皇制について』1945年12月発表をご紹介します。

(1)天皇制の特徴について

 <同一種族に属する,比較的温順なる国民の存在,国民の間に滋養されし家族主義,温情主義の習俗の普及は如上の君民一致の伝統の成立に寄興したのではないかと考えられ>,日本特有の風土・固有の国民性によって天皇制は育まれていった,まさに<あまねく世界に求めてその類例を得難い>制度だと説明。

 この歴史に鑑みるに,天皇制の特徴とは・・・

 1.<万世一系ノ天皇ノ存在
 2.<天皇ハ徳ヲ以テ君臨シ給ヒシ事實
 3.<天皇,國民ノ輔翼ニ依リ統治ヲ行ハセ給フコトガ,史實ニ基ク理念タルコト

 ・・・の三つに集約される。

(2)天皇制存置の理由について

 天皇制を<維持することは我が国民的総意であること疑い入れない>。

 <凡そ一国における政治の形態の根底には,常に歴史の基礎がなければ,その健全なる発達を期し得ない。
 「ラテン,アメリカ」諸国ないしは支那における民主政の移植発育の困難が,この事実を物語る。
 また1918年以後におけるドイツの民主主義憲法への急転の経験は,非常時局下に行われた急激なる憲法改正に伴う国情無視の危険を示すのである。

(3)憲法改正案に天皇制を盛り込むことによるメリットについて

 <天皇が国民的感情の中心たるより生ずるその道徳的リーダーシップの可能性>をもっており,<民衆と世論の激高・動揺等に際して,天皇は最も公正に国家の真益を図り給う地位にある>として,天皇制を改正憲法に盛り込むことで,日本は復興しうる。

 * * *

 もっとも高木氏は上のように述べつつも,天皇が現人神(あらひとがみ)の観念を去り,その神秘性を脱却するとともに,一方では神道の地位を明確にすべきだとしています。
 また憲法には,神道が国教化される懸念を払拭するため,個人に信教の自由を確立することが必要だとしています。

 高木氏の論考をお読みになって,いかがお考えになりましたでしょうか。

 高木氏が今から65年も前に述べていた「残すべき天皇制の姿」と現代における皇室を比べてみると,面白そうですね。

tag : 天皇 外務省 國体ノ護持 一君萬民ノ政治 民本主義 民主主義 軍国主義 ポツダム宣言 GHQ 高木八尺

新たな憲法秩序に上手に取り込まれていった現行天皇制 - わたしたちの憲法を考える(4)天皇2

 
             久々に憲法に関するエントリを書いてみようと思います。

 以前,象徴天皇制と国民主権原理を明らかにした第1条について書きましたが,今回のエントリでも引き続き「天皇制」について書いていこうと思います。

 * * *

 天皇制廃止を迫った日本共産党

 当時の日本共産党は,天皇から国民に主権が移譲され,国民主権(人民主権・人民主義)を基調とする新憲法秩序の下では,天皇制は不要だと主張していました。
 1946(昭和21)年6月29日に発表した「日本共産党憲法草案」の前文では・・・

 <ここにわれらは、人民の間から選ばれた代表を通じて人民のための政治が行はれるところの人民共和政体の採択を宣言し、この憲法を決定するものである。
 天皇制はそれがどんな形をとらうとも、人民の民主主義体制とは絶対に相容れない。
 天皇制の廃止、寄生地主的土地所有制の廃絶と財閥的独占資本の解体、基本的人権の確立、人民の政治的自由の保障、人民の経済的福祉の擁護――これらに基調をおく本憲法こそ、日本人民の民主主義的発展と幸福の真の保障となるものである。>

 ・・・と明確に天皇制の廃止が盛り込まれています。

 * * *

 連合国側の要求に応える形での新たな天皇制

 『帝国憲法改正問題試案』という外務省の資料があります。日付は1945(昭和20)年10月11日。
 外務省条約局第一課長の田付氏が準備したもので,当時の条約局の改憲方針がまとめられています。

 その中で田付氏は憲法改正に関する連合国の対日姿勢・要求について次のように報告しています(一部読みやすい形に改めています)。

 ・<聯合國特に米國においては右憲法改正に當り民主主義的,平和主義的及合理主義的精神及制度に則り行はれることを要求>。

 ・<斯る憲法の改正の時期に關する聯合國特に米國の態度は明確ならざるも「国民の自由なる意思」に基く改正を希望>。

 連合国(主に米国)は日本側に,改正の内容が<民主主義的,平和主義的及合理主義的>なものでなければならないと迫る一方で,今回の憲法改正が連合国によって押しつけられたり,強制的に改正させられたものではない意思を明らかにするよう求めていました。

 この要請に応えるためには,まず天皇主権を採用している明治憲法を改正し,主権を天皇から国民に移譲させた「国民主権」を基調とする今の憲法の形にする必要がありました。

 ただし日本共産党のように天皇制を廃止するわけにはいきません。田付案にも次のとおり改憲方針が示されていました。

 <天皇制度は帝國肇國の大精にして本制度の除去は日本帝國の滅亡なり。如何なる事態に相遇するも本制度の維持確立は帝國存立の絶對的基盤と言ふべし。>

 しかし天皇制の維持が<存立の絶対的基盤>と言っても,単に帝国憲法における天皇制をそのまま改正案に組み込むのでは,連合国側の求める「民主化・合理化」という要請に応えられません。
 そこで天皇制を維持しつつも,連合国の要求に応える内容をもった改正案を模索することになります。

 田付氏は新たな天皇制のありかたについて,次のように提案しています。

 <従来天皇と國民との中間に存在する機關にして法律上責任を有せず而も國民とも何ら關係を有せざるもの相當存在し(例へば内大臣,枢密院の如し)之が爲機構の複雑化せる外國民の意思の上通を塞ぎ爲に立憲君主の政体はその本来の姿を損はるるに至れり>

 少し難解な文章ではありますが,簡単に言えば,民主化と天皇制を両立させるために,田付氏は,既存の天皇制を利用して特権的な地位を築いてきた内大臣府や枢密院のような機関を排することを提案するのです。

 * 次回に続きます。

tag : SWINC GHQ 占領政策 憲法 9条 平和主義 戦争 日本共産党 田付景一

マスコミの不況は「阿弥陀の光も金次第」をさらに促進させるか - 創価学会名誉会長「平和提言」報道

 
             なかなかブログのほうに割く時間が作れず,お返事が滞ってすみません。
 後日,必ずお返事をいたします。

 * * *

 私はこのブログで散々マスコミのことを悪く言ってきましたが,私はこれでもきちんと新聞を取っています(しかも二社)。

 今月の26日のことでした。

 いつものように何気なく新聞を開いたところ,ある記事が目に留まったのです。
 その記事を読んで,寝ていた脳が一気に覚醒させられました(笑)。

 どんな記事を見てしまったのか,といいますと,ネットにも記事がありますので,いくつかご紹介しておきます。

 創価学会:池田大作氏が平和提言
 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090126ddm041040121000c.html
 

創価学会の池田大作名誉会長は25日、「人道的競争へ 新たな潮流」と題する平和提言を発表した。人類が人道的な価値を巡って競い合うべきだとして、「『人道的競争』こそ21世紀を拓(ひら)きゆくパラダイム(認識の枠組み)の先駆けたりうる」と訴えている。米国にオバマ大統領が誕生したことを受け、核軍縮を促進するため米露首脳会談の早期開催を提案。これと並行し、各国に核兵器の使用や保有を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」を締結すべきだとしている。

 あはは・・・(笑)

 上の記事は毎日新聞のものですが,実はこの記事を掲載しているのは毎日だけじゃありません。

 時事通信。
 核軍縮へ米ロ首脳会談を=池田創価学会名誉会長が提言
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009012500053

 産経新聞。
 創価学会名誉会長が平和提言
 http://sankei.jp.msn.com/life/education/090125/edc0901251958009-n1.htm

 日本のマスコミはいつから一新興宗教団体の広告紙になったんですかね?(汗)

 ここで注目すべきは記事の内容です。
 どこで,何のために,いつ,どうして,どうやって,池田創価学会名誉会長が<平和提言>なるものを発表したのか,どの新聞も伝えていないんですね。

 つまり,この記事の内容は,記者たちが自らの足で捜し,自分たちの目と耳で収集した情報ではない,ということなんです。
 おそらく「これこれを掲載してください」と外部からリクエスト(プレッシャー?)されたのでしょう。

 * * *

 さて,このような記事を見て,皆さんはどうお考えになりますか?

 1.そもそも創価学会名誉会長が発表した<平和提言>なるものを,大手新聞が取り上げる必要があった,といえるか

 2.一宗教団体に関する記事とはいえ,この程度の内容であれば,許容範囲・受忍限度を越えるものではない,といえるか

 3.一般にマスメディアは宗教的に中立であるべきか

 * * *

 いずれにしましても,上の記事を見れば分かるように,大手新聞社は公称830万世帯以上とも言われる学会員のみに向けた記事を,平然と新聞に掲載したことは事実として残っています。

 個人的には「創価学会に関する報道は一切してはならない」とまでは言うつもりはありません。
 新聞とはいえ,宗教団体に媚びて,そこから営利を見いだそうとするのは,ある程度しかたがないことです(第三文明だの,なんの良く分からない雑誌の広告が掲載されていることについて文句を言うつもりはありません)。

 しかし上の毎日新聞や産経新聞は一応「大衆」媒体(新聞)なんですから,俗っぽい言い方にはなりますが,「社会の公器」(organs of public opinion)の一つなんでしょう。
 そうだとすれば,広告とは区別されるところの「報道」。その「報道」の内容くらいは出来る限りpublicなもの,すなわち「公共性」を帯びていて欲しいものです。

 それだけではありません。
 毎日,私は配達されてくる某新聞朝刊とキオスクで買った「夕刊フジ」をきちんと読んでいますが(時には記事に首をかしげながら・笑),どの新聞も宗教に関しては創価学会の動静は報じるくせに,立正佼成会,霊友会,幸福の科学など他の宗教団体については全く報じていないように思います。
 同じ宗教法人なのに,どうして「報じる」「報じない」の区別がありうるのか。そこらへんの合理的な説明はしてもらわなければなりませんね。
  
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