鳩山首相が
中国の胡錦涛国家主席と会談し、
チベット問題について、<基本的には国内問題だ>としながらも、<対話により解決される>べきだと発言しました。
もちろん初めての会談ということもあって、大目に見るべき点は多いとしても、過去の鳩山首相の
チベットに対する考え方を知っている人間にとっては、やや残念と言いますか、戦う前から白旗をあげてしまったような印象を持ちました。
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鳩山首相はかねてから"pro-tibet"よりの発言を繰り返してきました。
鳩山首相は、平成19(2007)年4月12日の広島市内の講演で、
チベット問題について<大きな人権問題だ。ないがしろにはできないというメッセージを送ることが必要だ>と発言しています。
また、平成19(2007)年11月23日には、都内でダライ・ラマ14世と会談し、猊下に
チベットの目的である<高度な自治>を支持し、<力強くサポートさせていただく>との決意を語っています。
さらに昨年3月17日には、
チベット騒乱について、鳩山首相ら有志議員で以下のような姓名が出されました。
<(
チベット騒乱は)
中国によるチベット人権弾圧、文化破壊に遠因がある。
中国は真実を明らかにし、人道的見地で問題解決に努めるべきだ>。
鳩山首相は当時会見で<チベット人は一貫して対話と非暴力での問題の解決に努めてきた>とチベットを擁護しています。
鳩山首相の過去の言動から、
中国側は当初、鳩山首相に警戒感を持っていたようです。
ですが、鳩山内閣において、外務大臣に選ばれたのは岡田克也氏。これで、
中国側の不安も払拭されてしまった印象があります。
民主党:「岡田外相」起用 中韓が好意的報道
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090907ddm003010125000c.html
岡田克也・民主党幹事長が外相に起用される人事が固まったことについて、中国や韓国では好意的な報道がなされている。[…]また、岡田氏が08年5月の四川大地震で街頭募金を行ったことや靖国神社への不参拝、チベットやウイグル問題で「中国内政」への不干渉を表明していることも伝えている。
実は、先の日中首脳会談で鳩山首相が発言したとされる<チベット問題は基本的には中国国内の問題>というのは、鳩山首相個人の考えではなく、岡田外相の持論です。親中派としても知られる岡田外相の影響が、こういったところでつぶさに見られるのは、少しばかり警戒しておかなければなりません。
外交上、態度を明確にしないことも重要な意味があります。
たとえば、8月15日の終戦記念日を前に、鳩山首相は<参るつもりはないし、閣僚にも自粛していただきたい>と発言しましたが(岡田外相も<A級戦犯が合祀されており、総理や閣僚の公式参拝には問題がある>としています。)、そんなことはいちいち明言する必要のないことです。
私は、鳩山首相に靖国参拝してもらいたいとは思いませんし、無理に参拝する性質の施設ではないとは思いますが、靖国問題では、実質的に日本側に外交上のプライオリティがあります。
つまり、問題視しているのは、中国や韓国なのですから、いちいち「参拝しない」だの「自粛してほしい」だの言う必要はないのです。
しかし、岡田克也氏を外相にしてしまったことで、チベット問題では、日本は外交上のプライオリティを失ってしまった感が否めません。しかも、「東アジア共同体」の創設という、中国にとっても日本にとっても「お世話な話」を持ち出したばかりに、チベット問題を「中国国内の問題」だと位置付けるしかなくなってしまいました。
自ら外交カードを捨てるようなことをして、これからの対中外交は大丈夫なのでしょうか。
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これは余談ですが、最近よく「核持ち込み密約問題」って騒がれていますよね?
でも、「密約」なるものは、既に米国立公文書館で公開されているわけであって、それをただ日本政府が認めていないだけの話ではないですか?
よく「密約」を明らかにすることで、米国は追い込まれるぞ~という期待を示している人がいますけれど、私はそうは思えません。
「密約」調査なんてものは、前政権が隠してきた情報の一つを明らかにする意味で、自民党にとってはダメージになるのかもしれませんが、外交上ほとんど意味がないのではないでしょうか。
米国のキャンベル国務次官補が言っていますけれど、密約なるものは、<日本の内政問題>なのだ、と。まったくそのとおりなのであって、米国にとって見れば、「だからなんですか?」と言いたくなるような、その程度のものなんだと思いますが・・・
* 次回更新 10/4予定
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